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(日本語) 12/31 31日間で観た映画31作

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映画関連での変化として、年明けに『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』を観る予定ができ、その前作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を観る必要が生じたので、数日前に清水の舞台から飛び降りる覚悟でディズニープラスを契約したということがあります。服や家具を質に入れ、スッテンテンのスカンピンになってしまった私に世間の目は冷たく、日々骨身にこたえる人の世の辛さに何とか耐えしのぎながら生きております。最近はマッチを売って日銭を稼いでいるのですが、暖房器具の普及により売上は決して芳しくなく、仕事から帰ってくるたびにマッチ箱でいっぱいのままのカゴを見つめる子供たちの視線が痛くて痛くて仕方ありません。

 

 

 

 

1.『ショーイングアップ』ケリー・ライカート

2.『ナイトムーヴス』ケリー・ライカート

3.『花様年華』王華衛

4.『血』ペドロ・コスタ

5.『骨』ペドロ・コスタ

6.『ヴァンダの部屋』ペドロ・コスタ

7.『エイリアン:ロムルス』フェデ・アルバレス

8.『狂い咲きサンダーロード』石井岳龍

9.『マルサの女』伊丹十三

10.『小さな兵隊』ジャン=リュック・ゴダール

11.『ピクニック』ジャン・ルノワール

12.『大いなる幻影』ジャン・ルノワール

13.『大人は判ってくれない』フランソワ・トリュフォー

14.『ロビンソンの庭』山本政志

15.『自由を我らに』ルネ・クレール

16.『巴里祭』ルネ・クレール

17.『死刑台のエレベーター』ルイ・マル

18.『落下の王国』ターセ厶

19.『オマツリ男爵と秘密の島』細田守

20.『自由の幻想』ルイス・ブニュエル

21.『ミツバチのささやき』ビクトル・エリセ

22.『瞳をとじて』ビクトル・エリセ

23.『ポンヌフの恋人』レオス・カラックス

24.『カリオストロの城』宮崎駿

25.『自転車泥棒』ヴィットリオ・デ・シーカ

26.『天然コケッコー』山下敦弘

27.『スターウォーズ:スカイウォーカーの夜明け』J.J.エイブラムズ

28.『アナベル:死霊人形の誕生』デイビッド・F・サンドバーグ

29.『破墓』チャン・ジェヒョン

30.『エターナルズ』クロエ・ジャオ

31.『アバター:ウェイオブウォーター』ジェームズ・キャメロン

 

 

 

 

今月はヌーヴェル・ヴァーグのフランス映画をたくさん観ました。スタジオ撮影が嫌いなので、ロケーションで撮られたヌーヴェル・ヴァーグの光の捉え方は好感が持てます。こうした方向づけのもと制作された『大人は判ってくれない』(1959)、『死刑台のエレベーター』(1958)のほか、ネオリアリズモの傑作『自転車泥棒』(1950)など、寡黙で質朴としたストーリーテリングの中に、剥き出しの人間性のハッと閃く瞬間を捉えた作品に出逢えたように思います。また、邦画のドラマは少ないですが、今月は隙のない布陣だったと思います。特にまこちゃんと観にいった『狂い咲きサンダーロード』(1980)は素晴らしいバカ映画だったので色んな人にオススメさせてもらいました。卒業論文の提出や発表課題などが色々と重なり忙しい月でしたが、暇を見て映画館に通ったり簡単なアニメ作品を挟んだりして、うまくバランスをとりながら数々の素晴らしい作品を鑑賞できました。

 

 

 

 

以下、トップ3の発表です。

 

 

 

3.『ヴァンダの部屋』(ペドロ・コスタ監督、2000年、ポルトガル)

 

視聴方法…東京都写真美術館シアタールーム

 

前作『骨』(1997)で、主人公であるベビーシッターの女性を演じたヴァンダ・ドゥアルテに密着したドキュメンタリーです。しかしドキュメンタリーといえど、眼差す装置としてのカメラの存在が徹底的に透明化されているために、被写体はフィクションとしての様相すら帯びていずれの時間からも解き放たれるのです。上映時間3時間の中で、観客は映画の始まりも終わりも失い、ただ都市開発の騒音に苛まれながら薬物をキめ続けるヴァンダとともにそこに居続けるしかありません。映画は映画以上に観客を縛り付ける呪いとなって、その時間を過ごすというただそれだけの行為がもたらす限りない苦痛を観客に与え続けます。

本当に辛い映画でした。まだ30分くらいしか経ってなかったらどうしようなどと思い続け、そのたびに絶望し、苛立ちを募らせるばかりの3時間。エンドロールが流れたときは嬉しすぎて泣いてしまいました。もう2度とみたくありません。映画館を出たあと、恵比寿ガーデンプレイスの煌びやかなネオンは暗闇になれた私の目に眩しすぎました。

 

 

 

 

2.『ミツバチのささやき』(ビクトル・エリセ、1973年、スペイン)

 

視聴方法…シネマリス

 

ビクトル・エリセは世界を愛おしく見せる天才だと思います。監督によって繊細に捉えられた光の豊かな色や移ろいは、ある空間に唯一無二の郷愁や謎めいた神秘の予感を閉じ込め、観客の個人的な体験と結びついてスクリーンの内外を黄金色の記憶で明るませます。部屋に佇む静物のあれこれが私をおいてみな結託し、何か恐るべき計画を企んでいるのではないかと疑心暗鬼に陥る幼い独り寝の夜。冬の乾いた空気を突き破って彼方へ去っていく快速列車の走行音。たっぷりと醸造された濃厚な時がまどろむ私を包み込むベッドとなって、深い安楽の帳の向こうへ沈ませてゆく秋の日の午後…。懐かしい色と温度をした光は、記憶の中へ次々に素描をつくっては解け、つくっては解けを繰り返し、時間とともに映画の終わりへと突き進んでいきます。おとぎ話は嘘にすぎず、しかし嘘という現実でもあるのです。映画という現実が目の前にある。私にはただそのことが嬉しくて嬉しくてたまりませんでした。

 

 

 

 

1.『瞳をとじて』(ビクトル・エリセ、2023、スペイン)

 

視聴方法…シネマリス

 

映画の製作中に失踪した俳優の男。その映画の監督であり彼の無二の親友でもあった老人が22年振りに彼の行方を追う。あの日一体彼に何が起こったのか?消息を求めて駆け回る老人のもとに、ついに男を保護しているという介護施設から連絡が届いた。

それ自体映画でありながら物語の中で映画を扱うこと。それはその作品そのものを単なる虚構として貶め、本来その奥底に眠っていたはずの人を揺るがすもののエネルギーを凍結させてしまう危険を孕んでいます。そして本作は間違いなく劇中劇を主題として据えた作品であり、当然その危険性に真っ向から立ち向かった作品でもあるでしょう。エリセ監督の前作の出演俳優を本人役で出演させるなど、本作には常に瓦解の危うい影がつきまとい、冗長な展開がそれに拍車をかけます。『ヴァンダの部屋』と同じような、ドキュメンタリーとフィクションの際を探るような視線。ひょっとしたらこの物語はこのまま終わらないのではないかと不安がよぎります。しかし、圧巻のラストシーンはそうした不安を一切ぬぐい去ってしまうばかりか、生起し、完結に向かってひた走る物語という生き物の凄まじい力を、観客へ見事に叩きつけてくるようです。スクリーンの内外は目まぐるしく切断と結合とを繰り返し、そのたびに物語は死地に足を踏み入れ、また鮮やかに舞い上がってゆきます。鈍重な語りの中に発生するこの恐るべき揚力はリアリズムの堅固な視点をとってさらに力強く吹き荒れ、観客を映画体験の極地へと運び去っていきます。シアターが明るくなったあとでも、私はしばらく立ち上がることができませんでした。