Guten Morgen! Ich bin Uyu!
今回は相思相愛、ロッカーもシェアする(なぜ?)仲良しのめいちゃんのお家にお呼ばれしたときのことを書きたいと思います!σ(^_^ )💦
お酒を飲みすぎてよく覚えてない部分が多いので、忘れてしまったことは想像で補います。ですから、これは日記でありながらも多分の誇張と嘘が含まれていることを予めご了承ください。
何ヶ月も前から「遊ぼうね」と口約束だけしていたのですが、めいが忙しいのと私が怠惰なのでなかなか予定を合わせられずにいました。今回はようやく早めに予定を立てる機会に恵まれ、トントン拍子に話が進んだわけでありまして、本来はどこか外で日本酒でも飲み交わすつもりだったのが、安価なうえ時間も気にしなくていいということでめいがお家に招待してくれることになったのです。そのような流れがあって、せっかくの厚意に甘えさせてもらうので私も焼酎を手土産に携え、徹夜明けの眠い頭を振り振り自宅からは遠く離れた彼女の家まで長い電車の旅に出かけたわけでありました。
日中気まぐれみたいに降りつけた雨の名残が路面に燻って、夜はこころなしかより濃厚に街を包みこんでいました。「すっぴんで行くから」と事前でLINEのメッセージを送っていたにもかかわらず私はきちんとメイクをして髪まで巻いている始末で、このような卑小な不誠実が重なるに重なって、今の愚にもつかない、無為に失われたアドレセンスを懐かしむばかりのつまらぬ一若者がとうとう完成してしまったのだと、半ば自虐の念に駆られながら駅ナカをぶらぶらと散策していたところ、不意に見知った顔が視界の端に現れたのであり、それこそが紛うことなくめいのようでした。彼女は私のメッセージに気を使って自分もすっぴんで駅まで迎えに来てくれたのです、私はそれがわかった途端にひどく赤面し、むしろこちらが顔を隠したくなるような思いで、彼女の肩を持って、「いかん、いかん、それでは文字通り面目というものがないじゃあないか」そう慌てて体裁を保とうとするのですが、めいはめいで私の気恥しさをすっかり見越したようで得意になり、「君がすっぴんでと言うからすっぴんできたのだ、話が違うじゃないか」そうやってニヤニヤしながら平気でうそぶくのでした。ああ、この穢れなき純情の小悪魔よ!彼女に弱みを見せたのが運の尽き、今夜いっぱいは到底頭はあがるまい。私は暗澹たる思いで彼女と肩を並べ、駅前のディスカウント・ストアまでとぼとぼ歩いてゆくほかないのでした。
「まあ、人生酒だ、酒さえ飲めばたいていのことは上手くいく。友人親戚無病息災、飲酒とは一種の祈りだよ、さあさあ友よ、遠慮せずに飲もうではないか。」
めいは朗らかに言いのけて私のグラスに並々と日本酒を注ぎます。それで私も満更でもないような顔をするから余計たちが悪い、酒は汲めども汲めどもつきぬ、飲み尽くすときが人生の終わるときだ、そんな他愛のないことを饒舌にべらべらとこぼしながら上機嫌に酒を飲み続けるのです。
私たちはディスカウント・ストアで辛めの日本酒を一本とワインを一本、それにたこ焼きやら唐揚げやらの極めて腕白な肴を買い込んで、ずっしりと重たくなったカバンを期待とともにめいめいの肩に負いながらバスに乗り込んだのでした。ただ、この時点で一つだけ言わせていただくなら、このときに購入した安いワイン、これが大変な曲者だったわけです、我々の夜の端はこのとき早くもほころびを見せ始めていたのかもしれません。
めいの部屋は整理が行き届いているとまでは言わないまでも居住まいが良く、程よく散らかった本やら演劇の小道具やらがめいの存在と、そこに確かに編まれている彼女の生活を甘やかに主張しています。私はマットレスに腰をおろすと、階下までグラスを取りに行っためいをよそ目に、興味津々で彼女の部屋の観察を始めました。部屋の動線、よく使われるものとそうでないもの、本のタイトル、しどけない生活の気配。普段人を家に呼ぶことが多い私ですから、このようにしてはじめて訪れる友人の部屋の様子にはどうしたって興味が湧いてしまうのです。これは素晴らしい経験です。駅か何かでたまたますれ違った人にそのままついて行って、その人と、その部屋の様子とをそれぞれつぶさに観察することで、人となりやユーモアなんてものを何となく窺い知ることができたらいいなんて思うことだってあります。私を部屋に招くということは、自分の生活をそのような好奇の矢面に晒すということであって、めいもそれを十分承知したうえで私を招いてくれたのだろうと思いましたから、私の方も遠慮はしませんでした(しましたよ)。
しばらくして部屋に戻ってきためいは両手に花、でなくグラスを携え、それも我々にとっては花より団子、みたいなもので余計に気持ちも昂ってくるわけですが、さっそくテーブルに酒と肴とをずらりと並べて高らかに乾杯し、くたびれて乾いた布のように縮こまった体を再び酒の慈雨にゆったりと浸してゆくのでした。
全体的に言えば素晴らしい夜だったと言えましょう。我々の話題は次々に移ろってゆきました。矢継ぎ早、といってもいいほど軽快に繰り出される言葉は、互いの感応のスウィート・スポットへストンと美しく落ち込み、スイス人のプロテニス選手らの行う素晴らしいロングラリーを彷彿とさせる淀みなさと華々しさで、煌々と照らされた宵っ張りの一室を見事に彩ってゆくのでした。演劇から身体性と言葉へ、アウラの表象可能性と複製芸術、言葉を超えた先にある狂気なるもの、とどのつまり人間の無二の友人であるものとしての現実界。我々は言葉というものへの恐れを知らない若者であり、それでいて言葉の宿命的な不能に充分傷ついてきた老人でもありました。イメージを構築し、圧縮し、解凍する、その果断なき営みの中で我々の思想は編まれ、そしてそれは爆発的に躍進する若さという力によって、オデュッセウスの帰りを待つペーネロペーの織物のように、一晩のうちに再び解体されてゆくのでした。
ここでCM。
3/22(土)はNewtypeの先輩さえさんの生誕イヴェント!
テーマは旅行。したがって当日の決済は交通系ICのみが可能となります。(これに関してはガチの嘘です。)
なかなかお目にかかれない衣装ですから、当日の夜はぜひNewtypeへ!お酒を飲む準備もお願いします。さえさん、飲んだらすごいんだから…///
気づけば日本酒はあっという間に空になっています。我々は顔を見合せてだらしなく笑い合いました。
「おやおや、ずいぶん呆気なかったじゃぁないか。日本酒と言えどもこんなものかね、これでは西洋列強に舐められるのも無理はない。ビゴーもドーミエもさすがに日本酒までをも風刺はしなかったろうがね。」
「まあまあ、今度は我々が腑抜けのヨオロッパをとくと味わってやる番さ。見てみろい、こんなおちゃらけたビンをしてさ」
「本当だ。こいつめ、おちゃらけている。畜生、畜生」
「畜生、畜生」
呑気なものです。無理もありません。私たちはこの後に自分たちを待ち受ける失意と絶望をすこしだって知る由もなかったのですから。
互いに上機嫌でワインをついで、グラスをあわせました。軽快な音、アポカリプティック・サウンドなんてこんなものでいい。日本酒の酔いも少しして回ってきたころで、体と心が2cmばかりずれこんだ軽い離人の感を私は楽しんでいました。しかし、ワインは、店で最も安い白ワインは、そんな私の膨満感を突然激しく揺さぶり、獰猛に襲いかかり、意地悪く引き裂いてしまったのです。
口に含んだ瞬間口内を暴れ回る不快な酸味と、それと直結する形で脳を苦々しく満たす品性下劣な渋み。毒の洪水、鼠の行進、パンパンの乱痴気騒ぎ。ああこれは罰だ、悲惨だ、暴力だ。私は思いっきり顔を顰め、立ち上がって窓を開け、冬の夜空に向かって大きな声で叫びました。
「許さない!許されないぞ、こんなものは!貴様は異教徒だ、そうに違いない!」
見ると、めいもひどい顔をしています。沼のほとりで2週間天日干しにした病気のスカンクの匂いを無理やり嗅がされたような顔です。
「酔いしばれた舌にどうせワインの味なんてわかるまいよ、そういったのは誰だったい?君だよ君。いい加減にしろ、責任を取れ、この野郎」
この野郎、そう言いながら私たちは腹立ち紛れに取っ組み合いを始めました。部屋中に飛び散るワイン、跳ね回る唐揚げ。服はボロボロに破け、テーブルはひっくり返り、本は無惨に裂けて紙片が雪のように部屋を舞いました。
肩で息をしながら、我々は互いを鋭く見つめ、間合いを図り、それからどちらからともなく問題の元凶であるワインを引っ掴んで互いのグラスに並々と注ぎ始めました。
「畜生、飲め、飲め」
「お前が飲め」
もはや泥酔した私たちを止められるものなど何一つありませんでした。私たちは今や焦土と化した部屋で互いの口にグラスを押し付け、一心不乱に不味いワインを、味も感じないくらいの速度で飲み続けるほかないのでした。争いはなくならない、この世にまずい酒がある限り。この世に絶望がある限り。そうして、酔いはマゼランよろしく身体中をぐるぐる廻って、気づけば私はめいの腕枕の懐へ、深く、深く、沈みこんで…。
気づいたらもう真夜中になっていました。夕方に集まったことを考えると、少々寝すぎてしまったようです。黄色い電球が疑似太陽となって私の脳をだまくらかし、私は粗悪な酒に浸った最悪の脳みそであれこれ遅鈍な考えをのろのろめぐらせました。私は今めいの家にいて、酒を飲んで、そうだ、いつの間にか意識を失っていたのだ。慌ててスマートフォンを確認すると、インスタグラムには覚えのない投稿が一つ二つ…。私は悲痛に呻いてそれらをすぐに消去しました。何も覚えていない、ワインがまずかったこと以外は。頭を一秒おきに締めつける頭痛と全身の強ばり、喉の底に停滞し続ける吐き気の憂鬱な気配。最悪の気分でした。私はめいの分けてくれた、なぜかラベルの剥いである綾鷹のボトルを引っ掴んでがぶ飲みし、大海賊の宴よろしく豪快に息をつきました。背後で声がしたのはそのときです。
「目は覚めたかい、ずいぶん気持ちよさそうに寝ていたようだね」
めいはすでに目を覚ましていました。
「へん、おかげさまで。夢ひとつ見なかったさ」
こうして憎まれ口をたたく私たちは、驚いたことに素晴らしい友人同士なのです。
「寝る前にオセロをやっていたのは覚えているかい?」
「かすかにね。詳しくは分からないが、どうせ僕が負けたんだろう?」
「無論さ。よし、それじゃオセロの続きと行こうじゃないか。」
8-56
4-60
「端を取れば勝てるんじゃないのかね。もしかしてあれは、嘘か。」
「勝てると決まったわけじゃないさ。それに君がとった端はひとつだ。考えてもみろ、一角形なんてものはこの世に存在しないのだよ。お生憎だがこのオセロ版は四角形という形をしていて、君がとった角以外にあと三つ角があるんだよ。そしてそれは全て僕がとった」
そんなことはわかっている。しかし私は悔しいのだ。どうにもやりきれぬ悔しさが、私の中にわだかまって離れようとしないのだ。私はうなだれたまま首を振ってそっぽを向きました。
それから夜にした話の続きをしたり、炭治郎を褒めたり、互いに愚にもつかない病気のロバのようなウミガメのスープを出し合ったりしているうちに、あっという間に世界は朝を迎え、私達の悔恨や失意もすべて窓越しに射し込む清浄な光のものに洗われるようであったのです。素晴らしい時間というものはすぐに過ぎてしまうもので、私にもとうとう帰らなければならないタイミングというものが訪れました。
「それじゃあ行こうかな。さらばめいよ、命あらばまた他日。元気で行こう。絶望するな。では、失敬。」
「まてまて、もう行ってしまうのか。せめて僕がメイクを終えるまで待ってくれてもバチは当たらんのじゃァないかね。」
めいは引き止めてくれますが、私は頭痛と吐き気とでもう帰ってしまいたいのです。
「生憎だが、家も遠いときているのでね。さらばめいよ、命あらばまた他日」
「『津軽』はもういいよ。それじゃ玄関まで送っていこう。バス停まではすぐだからね。」
そうしてめいに別れを告げ、私はすっかり冷え込んだ朝ぼらけの光の中を一歩、また一歩と踏みしめて、家路に向かう長い道のりへ、とうとう乗り出したのでありました。
寒さに白くなった呼気が朝日を受けてキラキラと空へたなびいてゆきます。私は空を見上げ、雲間から顔をのぞかせるおだやかな太陽に目を細めながら、あっという間に過ぎ去ってしまった素晴らしい一夜の思い出に、思わず笑い出さずにはいられないような気がしました。
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