超絶可愛い女装メイドの居るお店
男の娘カフェ&バー NEWTYPE
営 業 日:月曜~日曜・祝日
営業時間:18時~23時 (金土は~翌5時)

僕らの町に、ジャッキー・チェンがやってくる!? ②

 

 

 

 

いいよね。

 

 

 

結論からいえば、芸能人は来ませんでした。

 

 

舞台で繰り広げられるくだらない子供だましのマジックショーを前にして、私たちはただ呆然とするよりありませんでした。今日のために髪を巻いてきた生徒、写真を撮ろうとこっそりスマートフォンを持ち込んでいた生徒、私たちはみな一様にこの予想だにしなかった事態に困惑し、途方に暮れていました。先生まで信じきっていたのに、どうして?困惑は落胆に変わり、落胆はやがて激烈な怒りへと姿を変えました。

 

痩せぎすの、眼球ばかりがぎょろりととび出た胡乱なマジシャンが、火のついた万国旗を慣れた手つきで口から引っ張り出している最中でした。不意に生徒席のどこかから怒号が飛んだのです。

 

「バカヤロー!」

 

その言葉を皮切りに生徒たちの怒りが噴出しました。それはもはや誰にも止めることのできないひとつの巨大なうねりでした。マジシャンはただでさえ飛び出した眼を驚愕に一層見ひらき、自分目掛けて次々に飛んでくるプリントやら上履きやらから身をかばおうと哀れにも両腕を振り乱していました。怒号は無限に重なり合って怨嗟の礫となり、マジシャンがどんなに身を竦ませようと避けられない意志の暴力として体育館中を満たしました。私は自分がうねりと共鳴し、その一部となって溶けてゆくのを半ば心地よく感じながら、生徒たちを押しとどめようと先生たちが躍起になって虚しい努力を続けるのを視界の端に捉えていました。

 

結局事件はなんの余韻も残しませんでした。皆そろって何事も起こらなかったかのように平然と振る舞い、これまでと変わらない退屈な学校生活を淡々とこなしているようでした。ただ、例の芸術鑑賞会にまつわることは誰一人決して口に出そうとせず、奇妙なまでの緊密さで結ばれた共犯関係の薄暗い恥の感覚が、その不自然な空白をあくまでも空白のまま留めていました。特に、先生と、噂を否定する生徒を率先して排除していた過激派の連中らはその連帯を強く内面化しているようでした。

 

事件から数日が経ったある日、校舎裏の焼却炉で、過激派の中心メンバーだった何人かの生徒がこそこそ芸能人宛の手紙を燃やしているのを目にしました。雲ひとつなく高く広がる冬の淡い空に、煤となった手紙がふうわり、ふうわり舞い昇ってゆくのを見ていると、あの事件は全て幻で、はじめから何も怒ってはいなかったのじゃないかという気さえ私にはしてきてしまうのでした。

 

以上が事の顛末です。

ご主人様の学校で起こった大事件も是非教えてくださいね